内藤 裕二/ 2019年 4月 22日/ 社内勉強会

TL;DR

受託開発にて、スクラムを実践中。
インセプションデッキを作成しました。

承前

先日のブログでも触れましたが、4月から、受託開発のプロジェクトに対してスクラムを適用して開発を進めています。
前回は開発チームとPO役のお客様交えてワークショップを行いましたが、先週、次の一歩として、インセプションデッキを作成しました。

色々と悩みながら進めたのですが、その内容を記録しておきます。

使用したテンプレート

本家、Robin Gibson氏のテンプレートを使用しました。

後で調べてみたら日本語版のテンプレートもあって、こちらを使用した方がやりやすかったですね・・・

MarkDown版なんかも作っている方がいるみたいです。

インセプションデッキ

下記の10個のデッキ(カード)を開発に関わる全員で作成します。

  1. 我われはなぜここにいるのか
  2. エレベーターピッチを作る
  3. パッケージデザインを作る
  4. やらないことリストを作る
  5. 「ご近所さん」を探せ
  6. 解決案を描く
  7. 夜も眠れなくなるような問題は何だろう
  8. 期間を見極める
  9. 何を諦めるのかをはっきりさせる
  10. 何がどれだけ必要なのか

前半5つがプロジェクトの目的、後半5つが手段に関するデッキで、全員でプロジェクトの方向性についての認識合わせをするのが目的となります。

受託開発におけるインセプションデッキ

従来の開発手法でもインセプションデッキに記載しているような内容はどこかのタイミングで決定しているはずですが、要件定義~設計~開発~試験~検収という従来の流れのプロジェクトでは、記載している内容が複数のドキュメントに散逸しがちです。

必要な情報を凝縮して集めたのが上記インセプションデッキとなり、開発の最中に手軽に参照できる、というのが大きなメリットだと考えています。

今回作成したインセプションデッキ

受託開発の場合、プロジェクト開始の前段階として見積作業があり、その中で作業範囲・期間・予算をある程度決定してから作業開始となります。
今回のプロジェクトでは、プロダクトオーナとなるお客様がエンドユーザに提出した見積仕様書があるため、それをベースにインセプションデッキを作成しました。
実物は公開できませんが、どのような内容を記載したかをまとめておきます。

我われはなぜここにいるのか

見積仕様書の「プロジェクトの目的」がベースになります。
システム開発の起点となる、エンドユーザが抱えている課題があり、それを解決するのがチームの存在理由です。

エレベーターピッチを作る

エンドユーザの業務システムの開発なので、あまり記載する内容が思い浮かばず、今回はスキップしました。

パッケージデザインを作る

こちらも今回はスキップしましたが、後から考えると、現状のシステムとの対比という点で、作成してもよかったかな、と思います。

やらないことリストを作る

アジャイルに進めるとはいえ受託開発なので、契約書上の作業範囲はここで明記しておきます。
エンドユーザから要望があったが範囲外になっている内容については、「やらないこと」もしくは「後で考える」に記載しておきます。

「ご近所さん」を探せ

今回のプロジェクトは単一部署・特定業務の担当者向けのシステムで、自動で連携するシステムがなかったため、こちらは非常にシンプルでした。

解決案を描く

システム設計書の一番最初に記載するような、システム構成を記載しました。
こちらも今回は非常にシンプルです。

夜も眠れなくなるような問題は何だろう

各人が課題だと思うことを記載しました。
弊社は受託開発がメイン業務なため、過去に納品したシステムの動作不良の解析等が急ぎで入ってくることがあり、開発期間中に割り込み作業にリソースが割かれる可能性がある、という懸念が上がってきました。
基本的にはあらかじめその分のリソースの余力を確保した状態でプロジェクトを進めることで、対策とします。

期間を見極める

ざっくりとしたスケジュールは、見積もり時に提出していますので、それをそのまま記載します。

何を諦めるのかをはっきりさせる

今回はベーシックに「期間」「予算」「機能」「品質」についてトレードオフスライダーを作成しました。
それぞれの優先順位に対して、意見を出し合って調整していきます。

何がどれだけ必要なのか

こちらも見積の際にある程度算出しているので、それを記載しました。

感想

従来は仕様書の形で作成し、打合せで共有していたような内容ですが、Webミーティングで画面共有しながらテンプレートに書き込んでいくことで、かなりスピーディに作成できたと思います。
作成したインセプションデッキはリポジトリにコミットし、適宜見直しながら作業を進めていこうと考えています。

アジャイル手法の適用は初の試みなので不安要素もありますが、従来の進め方よりも自分たちで組み立てている感覚を強く感じました。
今後も適宜、当ブログで状況をご報告できれば、と思います。